家族と働くのが、いちばん気をつかう
家族と働くのが、いちばん気をつかう
「家族でお店、いいですね」
そう言われること、 けっこうあります。
うちは、 父と妹と3人で 店をやってます。
家族経営、 気づけば11年目。
たしかに、 ありがたい環境だと思う。
ご飯も一緒に食べるし、 子供の話もする。
そういう近さは、 やっぱりいい。
でも、 正直に言うと。
他人になら言えることほど、 家族にはいちばん 言えなかったんです。
「他人なら言えること」が、言えない
これ、 やってみないと わからないと思う。
雇ったスタッフになら、 仕事の話として、 わりとはっきり言える。
「ここ、こうしようか」って、 普通に言える。
でも、 父と妹は違うんです。
20年、30年分の、 家族としての関係がある。
だから、 仕事の指摘のつもりが、 昔の何かを 引きずってるみたいに 聞こえてしまう。
言った方も、 言われた方も、 妙に角が立つ。
他人となら、 仕事の話で 済むのに。
家族だと、 人生ごと ぶつかってくる感じが あるんです。
だから、 飲み込む。
飲み込んで、 あとで一人で もやっとする。
家族って、 近すぎて、言葉が 選べないんですよね。
ある日、父とぶつかりかけた
ある時、 店のやり方を ひとつ変えたかったんです。
僕は変えたい。
でも父は、 「今までこれで やってきた」。
父の声って、 普段は穏やかなんです。
でもこの時だけ、 ちょっとだけ かたくなった。
その空気で、 僕も黙りました。
父は美容師歴40年。
その40年が、 父のやり方を 作ってる。
雇った相手なら、 「まあ一回 やってみましょうよ」で 済む話。
でも、 父には言えなかった。
なんか、 父の40年を 否定する気がして。
言葉が、 喉の手前で 止まりました。
父の40年を、 僕は否定したいわけじゃ なかったんです。
言う前に、AIに一回ぶつけた
その夜。
営業が終わって、 一人になってから、 AIに打ち込んでみました。
父に言いたいこと、 そのまんま。
ちょっとした 愚痴も、 イラッとした気持ちも、 込みで全部。
人にぶつけたら、 ただの愚痴。
でもAI相手なら、 誰も傷つけずに 吐き出せる。
そのうえで、 聞いてみた。
「これ、 どう言えば 角が立たない?」
返ってきたのが、 意外でした。
「説得しようとせず、 まずお父さんの意見を 聞く形にしてみては」
…あ。
僕、 父を説得する ことばっかり 考えてた。
父がどう思ってるかは、 一回も 聞いてなかった。
言われてみたら、 当たり前のことでした。
でも、 身内が相手だと、 その当たり前が すっぽり抜ける。
「どうせ分かってる」 って、 勝手に決めつけてた。
僕は父を変えたかったんじゃなくて、 ただ自分の正しさを 通したかっただけだった。
翌日、言い方を変えてみた
次の日。
「これ、やめよう」 じゃなくて、
「父さんは どう思う?」
から入ってみた。
そしたら父、 意外とすんなり。
「お前が そう思うなら、 一回やってみ」
拍子抜けでした。
ぶつかってたのは、 中身じゃなくて、 伝え方の方だった。
同じことを、 言う順番を 変えただけ。
それだけで、 こんなに違うのかと。
妹に対しても、 そうでした。
「言わなくても 分かるだろ」で、 ずっと雑に 伝えてた。
兄妹だから、 通じてる気に なってただけ。
家族だから、 って甘えてた言葉を、 ちゃんと選ぶように なりました。
家族だからこそ、 言葉を選ぶ。 それでよかったんです。
家族と働くのは、 やっぱり気をつかう。
でも、 それは悪いことじゃ ないなと思ってます。
近いからこそ、 言葉を雑にしちゃ いけない相手。
AIが間に入って くれたのは、 うまい説得の言葉じゃ ない。
言う前に、 一回だけ 冷静になる時間でした。
たった一晩、 頭を冷やすだけで、 言葉って こんなに変わる。
近い相手ほど、 あいだにワンクッション あった方が いいのかもしれません。
父と妹と、 まだしばらく、 この店をやっていく。
言いたいことほど、 ちゃんと言葉を 選びたいんです。
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